耳慣れない方のために少しお話ししてみます。
粉引きが朝鮮半島から、
青磁や染め付けが中国から伝わったように、
安南絞り手は、鎌倉から室町あたりに、
安南=今のベトナムあたりから伝わったそうです。
安南あるいは絞り手と言われる青い絵柄が滲んだもので、
安南には他に青磁や赤絵などもありますが、
灰釉ですこし温度が上がってしまって、
ゴス絵が滲んだものを、
侘びた風情で当時の茶人たちが好んだようです。

ゴスが滲んで青い釉のようになっています。
このような景色を「泣いている」と言ったりします。
他の粉引きや染め付けなどの、
導入されたやきものと同じに、
コピーされ、伝承されて今日にいたっています。
藤田さんの安南は、
陶器の素地に白化粧掛けをして、
ゴスで下絵を施して、
わら灰で調合したワラ灰釉をかけています。
焼成は、還元炎気味で焚いて少し中性炎に戻したように、
見受けられます・・・が、
違ってるといけないので、
そのあたりは25日に忘れずに確認しておきます。
いずれにしても、ワラ灰釉は間違いなく、
しっかり芯まで焼き切っているので、
柔らかく、ゆったり変化していきますが、
使う前に、湯や水をくぐらせてからお茶や料理を盛りつけてもらうと、
使うほどに侘びていって、
また一段と落ち着いた表情になっていきます。
湯呑みやマグなどは、お茶類のタンニンなどで、
貫入が美しく入って行きます。
*貫入=特に陶器に多く見られる、釉に入る、
細かなヒビを、見所、景色として、そう言います。
使うほどのお茶や食物が入り、
貫入が目立ってきます。
はじめから墨汁やベンガラで、
染めて出している産地などもあります。

赤絵も施してあります「紅安南」と藤田さんは名付けています。
やきものに関しては、桃山の時代が一番多いのですが、
朝鮮半島大陸から器と一緒に技術も伝播して、
その後も、はぐくまれたり大切にされ、発展もしているのは、
ぼくらの国の豊かな見識と審美眼が故かと思います。
その感性を受け継いでいるはずのぼくらも、
そう意識して、それらを愛で、
先人たちのように、身の回りで使い続けて行きたいものです。
閑庵