藤田さんはこのところ材料で苦労しているそうです。
それは、土(杯土)であったり、
灰であったり、ベンガラだったりします。
藤田さんだけでなく、
やきものの作り手も、藍染めも、木工も、漆器も・・・、
銀花で活躍してくださる方には、
自然の材料や、昔ながらの製法や精製方で作られた、
素材や材料で、仕事をしている方が多く、
皆さん大変苦労なさっています。
工芸全般の認知の低下や、
素材感の理解度が乏しくなっているのか、
(ぼくはそう思っています)
工芸の材料などを支える方々は、
日の目を浴びることもなく、
老齢化や条件の悪化でどんどんやめていったり、
後をつげる方がいなかったりという話をたくさん聞きます。
藤田さんの安南手の話を例にすれば、
まず土が違う物になったそうです。
掘る方や掘る場所が違うのか、
焼き上がりが違い、新しい土に変えてずいぶん探されたようです。
当然、釉薬も土に逢わせて調整など重ねて、
ずいぶん苦労されていました。
と、その釉薬にまたまた問題が・・・。
わら灰を使って調合しているのですが、
当然、ワラを燃やして作るものです。
これも、天然物となりますな。
そのわら灰の品質がまた違ってしまい、
それもずいぶん苦労なさっていました。
わら灰を自分で作る方法もないわけではありませんが、
それには材料の入手と焼くスペースのなどの問題があり、
現状では、断念したようです。
気に入った材料はなるべく、許す限り買い置きしておくようですが、
それでも限度はあり、次ぎに入手するまでに時間が空く分、
品質の変化も厳しくなることなのでしょう。
ちなみに今度は、赤絵のベンガラがダメなようです。
調べてみると、今までの物は、
九州の方でおじいさんが石臼ですっていたらしく、
その方がおやめになってしまわれたそうで、
もう手に入らないようです。
値段に糸目をつけないと、著名陶芸家もつかっている、
良い物があるそうですが、
とても、使い切れない価格だそうです。
もしも、安定だけを考えれば、
灰や土は、合成されたものに変えることで、
価格もやすくなるし、入手も楽になりますが、
それでは、皆さんに満足していただけないでしょう、
藤田さんの仕事でも、なくなってしまいます。
そのために、苦労してでも、
天然物をつかっている藤田さんです。
閑庵