「じゃー、どう違うの?どこか見分けるとこないの?」
「まー定義としては、素地が吸水性のあるものは陶器で、
ないものがせっ器となっているがな。
一般的に陶器の方が柔らかな感じを持った器だな。
それに手持ちも軽いといえるな」
「それって、弱いってことなの?」
「たしかに、一部のせっ器はとても丈夫で堅さもあるといえる、
逆に陶器の中にはとても柔らかなものもある。
ただ、普通の器として作られたものなら、
使いやすさから言っても、程度がある。
過剰に気にしなくてはいけない柔らかさでは器とは言えないと、
わしは考えているがの。そりゃー落としたり、ぶつけたりすれば割れるが、
普通に器として使っている分には、支障がないはずだよ」
「美器はそそっかしいけど、それでも案外器を割った経験ないな。
でもね、端っこが掛けたりしちゃうことがあるよ」
「そう、皆さんチップしてしまうことが、多いようだな。
そのほとんどが、洗う時のようだぞ」
「そうなんだよね。落として割れば諦めが付く感じなんだけど、
気がつくとお気に入りの器に限って、口が欠けたりしてるんだよね」
「美器ちゃんは、水切りカゴはどんなものを使っているかい?」
「美器はステンレスの針金の太いのみたいのでできてるやつだよ」
「やはりな。そのタイプをお使いの方がおおいようだな。
錆びないし、プラスチックより汚れ目立ちにくいしな。
だがね美器ちゃん。算数で『円と円との接点は一点である』ってそう習っただろう」
「うん習ったよ。あーあー話がどんどん広がっちゃうなー、
今度は幾何ね。おじさんそれは算数というより数学の幾何だよね」
「そうそう、幾何じゃ。そこで、美器ちゃんの使っているステンレスの水切りカゴにお皿を立てるとする。
その時受けるカゴは、ステンレスの丸い棒だよね。
ということは皿を一点で支え受けるんだよ。
静かに立てたつもりでも、数ミリの落下があったり、
おいたときに当たる部分は、一点になる理屈じゃよ。
当然急いでいたり、うっかりして、少しでも落とすことになれば、
皿の重さと落ちたスピードとの衝突エネルギーが一点に集中するわけじゃ。
違った見方をすれば、皿の縁をナイフでたたく様なものじゃよ」
「うーん、そっかー。なんだかこわくなっちゃうなー」
「いや、そう臆病にならなくても、この理屈を知っているだけで、
どこかで意識するからチップがすくなくなるよ。
ただ、それでも忙しいときや人寄せでいっぱい器を洗うときなどは、
そのステンレスの水切りカゴにタオルを一枚引いておくといいよ。
それだけで、全く違うから」
「そっかー、この前うちでパーティしたときに、
気を使った友達が洗ってくれたんだけど、酔っぱらっていたせいもあって、
ちょっと欠けててるのがあったんだよね。
でも、せっかく手伝ってくれたのに言えないしね。
そうゆう時はタオルだね」
「大昔は竹のカゴだったりしたのは、
器のためには、優しい配慮でもあったんだな」
「隠居ありがと。また勉強になっちゃったよ。
今度から使うときにお湯や水です濡らしてから使うようにするね。
特に使い始めのうちは気をつけなきゃね。
とくにに陶器はね。あと、器をどんどん使うことも大切だけど、
それなりの愛情や優しさを持つべきなんだね」
「そう、そうしてあげると、器は使うほどに色艶が増していくものだよ。
湯茶が少しずつしみ込み、貫入が美しく出てくるのを楽しむのは、
侘び寂の文化を日常の暮らしに取り込むことになるよ」
「でも、美器の優しさがたらなかったから、
このご飯じゃ碗は侘び寂でなくて、汚れになっちゃたんだね。
お茶わんに可愛そうなことしちゃたんだね」
「まー、美器ちゃんそこまでおもうなら、こうしようよ。
食器用の漂白剤があるだろう。あれを薄めてつけておけば、
このぐらいのしみならとれると思うよ。
まずはそれでいったんしみをとって、
その後漂白材の匂いがしなくなるまでよくすすいで、
よく乾かして、できれば、お日さまに干したほうがいいかもな。
これでだいたいは、始めからやり直しできるよ」
「わかった。試してみる。
それで今度は、侘び寂のきいたご飯茶わんにして見せに来るね」
「おお、それは楽しみじゃ。待っているよ」
「隠居ありがと、じゃまたねバイバイ」
「もう昼時だよ。ご飯食べていかないかい・・・・あららもう、帰っちまったよ」
まいどお後がよろしいようで。
甘庵
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