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うつわ屋のつぶやき

うつわ好きの甘庵が、やきもの・吹きガラス・漆器などの、四季折々の身近な和食器を使う楽しさをお伝えします。荻窪銀花で催される企画展の器をご紹介し、使い方から、作り方、作り手のことなど、毎日お伝えします。

お話し会のネタ その6

今日の荻窪はとても暖かく、
これで桜も一気に開いていくことでしょう。
お話し会ネタはまだまだあるので、
細切れにしないでど~っと、長い。
なので、勇士・・・いえ、有志だけでよいので、
覗いてみたください。

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4.器と話す
作り手たちは翻訳家です。
自分が作り出すそれぞれの素材からの発信を、
ぼくらに分かりやすく、器と言う形で提供してくれます。
粘土が轆轤(ろくろ)の上であっと言う間に器になる様子や、
溶けたガラスを息で膨らまして作られたことや、
木からやっと手に入れた漆という樹液を、
何度も何度も塗り重ねたことなどを感じ取りながら、
器が作り出される様子や器の性質などを、器から聞きましょう。

a. 器が語ること
私たちの身の回りにある器は種類も、素材も豊富です。陶磁器、ガラス、漆器、プラスティックや、金属。作り方も、昔からの手仕事のから、コンピューターを使った仕事まで、多種多様に存在しています。
ここでお話するのは、手で作られた工芸に限ってのお話になります。作り手の力量で、器の語る言葉が豊富になったり、大きくなったり、あるいはわかりやすくなったりもします。それは、ぼくらに器の魅力や好さをアピールする事にもなるのですが、アピールが強く、あるいは華やかなものだけが、必ずしも良い器とは限らないものです。表面だけでなく、器からの語りをより正確にくみ取るためには少しだけ知識を持っていると、より聞き取りやすいと思います。そのための必要だと思う知識を少しお話いたします。

b. 素材の特性を知る
器はそれぞれの素材の持ち味を活かして作られています。それぞれの持つ性質や特性を知ると、より器の魅力ある語りを聞き取る事が出来ると思います。これは作り方にも、使い方にも、関わる事でもあるのですが、身近な器への知識は幅広く必ず役立つ知識になります。
大まかに性質から分類すると、

やきもの→陶器・・・・質感=荒い・ざっくり 特徴=素地の吸水性
     せっ器・・・質感=硬い・緻密   特徴=素地は吸水性がない
     磁器・・・・質感=滑らか・硬く緻密   特徴=素地は吸水性がなく透光性

ガラス →ソーダガラス・・・強く多目的 器から瓶や建築ガラスなど
     鉛クリスタルガラス・・透明感があり、金属質の音色・・・脆い
     硼圭酸ガラス・・・硬質ガラスとよばれ耐熱性がある=直火のポットなど

漆器 → 木胎漆器(もくたい)=ロクロで挽いた木の木地などに漆を塗ったもの
     籃胎漆器(らんたい)=竹などで編んだ籠やざるに漆を塗ったもの
     乾漆 (かんしつ)=紙や布などの芯に漆を塗り固めたもの=一閑張り
     陶胎漆器(とうたい)=素焼きなどの焼き物に漆を塗ったもの

と、これらは材料や製法からの分類ですが、そのために変わる性質が、器を造りにも、
出来た器を使い、楽しむのにも必要なことです。これを器の語りとここでは表現しています。

c. やきもの声
まずは、一番身近で多く知識を持っているはずの、やきものからお話しましょう。材料は「粘土」と言われる耐火性のある粘りのある土を、手で形づくり、あるいは型に押し込み、更に、ロクロの技術を使い、形作ります。これは、普通粘土と言われる土の持つ可塑性が、形作ることを自由にしています。土ものと言われる陶器、せっ器は、これにあたります。石ものといわれる磁器は少し違い、石を細かく砕き、粉にしたものを基本の素材にして調整しています。粘土よりは挽きにくく、独特の技術がいります。ロクロという道具とそれを使いこなす技術があってこそ成り立ちます。土ものでも石ものでも、いずれにしても、可塑性のある粘土という状態でこそ、様々な形が作り出され、また、ロクロがあってこそ、量産されて、器として身近なものになりました。やきものは古くから使われていても、初めは無釉(釉薬のかからないもの)でしたが、時代と共に、様々な釉薬が開発導入されていき、江戸初期には現在見られるほとんどの作風や手法が確立されていました。当時は茶人などの限られた特権階級の人々のものだった器が、ご理解さえ頂ければ、身近で使えるという、恵まれた現状になっています。しかし、それに気づかずあるいは、器からの語りが聞こえにくいのか、限られた種類の、あるいは大きな声で語る器のみを使う方が多いのは残念です。とくに土ものは弱いとか、チップ(縁などがすこしだけ欠けてしまうこと)しやすいという、磁器に比べれば、素材の持つ堅さが少なく、色が変わって行く様を良しとしていただけないと、土ものの語りは心地の良い物とは言えないかもしれません。でもここに、侘び寂びといわれる和の美意識の代表が存在し、毎日の食卓でも楽しめる事だと、見直して戴きたいと強く思います。
一方磁器は、使うことで表情が変りにくいという良さをもっています。磁土は陶土より重いので、通常は薄目に仕上げるのが約束です。ところが陶土より挽きにくいために、薄く仕上げるの伝統的な技術が必要で、それがまた固定観念に結びつき、それが良い物の標準として定着し、それらは時代へ背景とともに、鋳込み(型物)、機械ロクロなどの量産と姿を変えていき、その量も多いために、磁器=量産をイメージする方もいたりします。それでも近年は、磁器の産地以外でも手の後を残した、温かみのある磁器を作る作り手が増えて来ているは、嬉しいことです。
やきものは、陶器でも磁器でも、作り方や、性質の多少の差や特徴がそれぞれにあっても、おおよそは粘土という形状の可塑性のあるもので作り出しています。そのために、やきものの器から聞こえる声は、まずこう語っています。
それが柔らかな瑞々しい肌合いの粘土をロクロという技術や、タタラという粘土の板にして型から姿を写したり、板を組み立てたりと、柔らかく自由になる性質を上手く使って、形が作られたことを想いながら、器を使い、お茶を飲んだり、料理を盛りつけたりして楽しみながら会話出来ると思っています。素材の粘土には、土ものほっくり焼けた陶器や、かちっとざっくりした土肌のせっ器や、光りにかざすと光りが通る滑らかな生地の磁器とか、器一つずつの違う顔つきがまた、楽しいものです。




d. 吹きガラスの声
ガラスも、やきものと同様に身近な器の素材です。器ばかりか、お酒や醤油といった液体や食品を詰める瓶や、建築や車や電車の窓ガラスや、電球や蛍光灯、プラスティックが多くなりましたがカメラや眼鏡のなど光学レンズ、断熱材などに使われるグラスファイバー、ファイバースコープや通信用ケーブルまで、広い範囲でつかわれています。
歴史も古く、紀元25世紀まではたどれるようです。初めは、装飾用かお守りか、今でいうトンボ玉のような小さく不透明のものでした。はじめに中空の器が出来るのは、コアガラスという方法で、粘土などの芯にガラスを巻いて形作り冷めた後に芯の粘土をかき出して作ります。その後紀元前後にローマンガラスという吹きガラスの原形が出来上がり、器を作るのに適した技法として、世界中に広がっていきました。
現代でのガラス工芸の器は、ほとんどこの吹きガラスの手法で作られています。酸化しにくくガラスに色をつけないステンレスのパイプに溶けたガラスを巻き取り、息を吹き込み膨らませて形作ります。装飾も様々な方法が好みで加えられます。
ガラスは人工の素材で、作り手の好みや意志が反映しやすく、色がある素地も、無色透明な素地も、作り手によって選ばれていて様々です。この素地自体に、まず、ガラスの語りがあります。ガラスは固まって固体なのですが、物理的にいう、液体が結晶して固まった固体ではなく、液体のまま結晶化しないで、液体の姿のまま固まっているためにそれぞれの色や濁りや澄んだ質感と見て取れます。形も含めてそれが熱く溶けた液体だったこと、そこに息を吹き込み巧みな技で形作られた事を、思い描いてみてください。
様々の好みの素地と、作り手の特徴のある形と相まって、様々なガラス器がつくられます。
やきものが、粘土で形作って、釉薬をかけて、苦難のともいうべき高い温度で焼かれて、姿を生み出すのとは異なり、水飴か蜂蜜のように高温で溶けたガラスを、それが固まっていってしまうまえの、わずかな時の間に、匠の技で、使い易さを満たした器の姿を生みだし、装飾も加えます。まさに熱い仕事なので、ホットワークといわれます。冷たい飲み物が入って結露したグラスが、熱く溶けたドロドロの液体から形作られたのことを想像しながら、飲み干すのも、不思議な感覚ではないでしょうか。滑らかで有機的な吹きガラスのフォルムを、眺め透かして、有機的な感触の掌(たなごころ)という、手に納まり心地を楽しみながら、グラスの語りに耳を澄ましてみてください。


e. 漆器の声
普通漆器は、ロクロで挽きだした木地に漆を塗り上げたものをいいます。漆器にイメージすることの多くは、その潤沢な表情への憧憬と、高級なもの、普段使いではなく特別な時に使う、扱いや後始末が面倒・・・などと、普段漆器をつかっている庶民のぼくからすれば、それらの誤解は、まるで怪奇ロマン伝説のように感じます。確かに漆器の持つ表情は塗装の中では、最上級のものといって間違いないと思います。と、同時に、性能でも最上級です。ただ、あくまでも、塗装であること、また他の工芸の器とは違い、素地は有機物な木で、そこに有機塗料の漆を塗った、有機的な器だと言う点です。
例えば洗うことなら、洗車と比べて考えていただければ、わかり安いでしょう。どんな高級車でも美しく保つために洗うのと同じに考えてください。漆器を洗うときは、使った後の汚れをのこさないという点で中性洗剤をつけてきちんと洗い、良く濯いでいでください。ただ、愛車の時に気を遣われるように、硬いものでは洗わない、こすらないと言うのは鉄則です。塗装面は柔らかいからです。でもこの有機的な柔らかいという事が、強い塗装の条件です。
漆器は「漆がはじめにありき」ではなく、「木の器がはじめにありき」なのです。木と言う素材が好きなぼくらが、木を丈夫に長く使えるために一番丈夫になる塗料だった漆という素材を選んだのです。軽くて断熱性のある木と、木の樹液である漆との相性は、抜群です。漆自体は、古くは縄文時代から、縄文土器の漏れ止めや装飾として使われていましたが(陶胎漆器と同じです)、器としては木との抜群の相性で出来た漆器が一番だったようです。漆は、木の呼吸を止めない塗料で、四季の変化で動く木地に柔らかいからこそ追従していけるので、ヒビが入ったり剥げたりはしにくい、丈夫な塗料なのです。
木は乾燥や過剰な熱には弱いですし、燃えます。中身が木だと言うことを忘れなければ、あまり神経質になる必要はありません。しかも、乾いた漆は熱にも強く、灰皿などのも使われ、タバコの直火でもたえられます。二つに鋳込んだお茶の釜などの接着に使われ、直火で湯を湧かすのにも問題なく耐えるほどです。こんな漆を塗った漆器なのですから、熱いとはいえどもおみそ汁を入れる椀として、木との相性の良いタッグの漆器は本領を発揮します。

口当たりの柔らで、手にしたときの漆器の肌合いは、他にはない心地良さの器です。
木という有機的な素材を、木との語りから最適の「木どり」して、木地轆轤で引き出す、鑿やカンナで削りだしたり、刳りだしたり、あるいは、指物と言う技術で組んで作り出した木の素地に、漆という天然の塗料を、塗っては研いでまた塗るという作業を何度も何度も繰り返して、あの滑らかな肌合いに仕上げて行く作り手の愛情溢れる手間が、長く飽きの来ない漆器を作り出しています。この素晴らしい木の素地に漆を塗装して作られたjapan(漆器)を、ぼくらの文化として誇りの思いながら、暖かいおみそ汁を暖かいまま頂きながら、漆器の語る声を聞き取りましょう。


f. 良い翻訳
使っていると素材の質感を楽しめて、心地の良い器は、良い翻訳と言って良いでしょう。
良い翻訳者である作り手が、素材の語りを上手く訳してぼくらに判りやすく伝えてくれているからです。
使うことで、作り手の作る楽しみを疑似体験できたり、高温の窯の中で変化する窯変をかいま見て、溶けた液体が固まって言ってしまう前にリズミカルに形作られる様や、丁寧に緊張と静寂感を塗り込められるような潤んだ質感・・・そこには作り手の優れた匠の技が、まさに翻訳家として際だつところが、ぼくらにも使うことで見えてきます。

甘庵

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テーマ:工芸 - ジャンル:学問・文化・芸術

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